ギラついた友人の目が忘れられない話

笑った話


「今夜暇なひと飯食べよう」

その友人のLINEで集合した平日火曜日。

時刻は22時。私たちは新卒の面倒をみるくらいの年齢で働く社会人。例外なく、それぞれ明日仕事があり、疲れを残さないように帰るか、もう少しだけ一緒に過ごすかというところを少なくとも私は考えていたところだった。

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「今から海行こうよ。」

しらふの状態で友人の口から発せられたその言葉とそれを口走る表情に私は衝撃を受けた。

そこには生半可な気持ちで言ってる訳じゃねえぞ、という重みと、むしろ海に行かない訳ないんじゃないか?という揺るぎない信念までみてとれたのだ。

私は一見爽やかにもみえるそのまっすぐな眼差しがなんかいとおしく、同時にそれが可笑しくて仕方がなかった。

その友人には少し悪いけれど、久しぶりにツボにはいってお腹がよじれるほど笑う。

なんなら今夏私たちはすでにその海へ行っている。

しかも今から行くとなると車で向かったとして往復4時間くらいかかる。

帰ってくるのは間違いなく翌朝だろう。

そしてなにより深夜、海へ行ったとして、それでどうするというのだ。

このブログでさんざん、このスポットのこの時間帯の景色がエモいだなんだって言ってきた私でさえ、全く興味が沸かない。

この、なぜか海へなんとしてでも行きたい者と、なぜか流されつつある者と、なんとしてでも帰って寝たい私の三角関係が、私は面白くて仕方がなかった。

「え、行こうよ~。」

「いやいやいや、え?、明日みんな仕事あるよね?」

「すぅ~(深く息を吸い込む音)、行くかあ。」

「なんでだよ。なんで海に行きたい方が多数派なんだよ。」

「運転するし、みんなの家まで送り届けるよ。」

「まじ?じゃあ行こう。」

「みて、あの目を。目がイッちゃってるじゃん。運転させたらヤバい目をしてるじゃん。」

「…確かにwww」

結局、私たちは海へは行かず代わりにいつも通りカラオケに行くことにした。

決め手は「海行かね?」という友人の目がイッちゃってたからである。

当の本人は部屋に持ち込んだお酒を飲んで爆睡。残されたふたりはしっぽり歌いながら、やっぱり行かなくてよかったかもしれないと目配せしあった。

終電を逃し、長い道のりをひとり歩きながら私の脳裏には友人のそのギラついた目がくっついていて離れない。

ひとは見た目では判断できないとよく言われ、勝手な推測の類いにはなってしまうけど、その友人Aという人間を操作する友人Aの本質的な部分がまるごと言葉と表情としてでてきていたみたいに思えて、海へは行きたくなかったけれど、それを語る友人Aはとても自由で、いとおしく思えた。

今度誘われたらノッてみよう。

ブログのネタもできるかもしれない…(こってこての下心)。

それではまた来週のブログでお会いしましょう~。