天の川の写真が撮れるまで一週間その瞬間を待ち続けた体験談(苦戦模様編)

体験談 旅情報

  • 「歩いたら2時間くらいかかるよ?」
  • 「あ(察し)、こちら和歌山の白浜ですぅ~。」
  • 「殺されるのかと思いました。」

これらは私が下田へ星空撮影をしに行った際に言われた言葉たちである。

今回はこれらの言葉とともに旅の苦戦模様を振り返りたいと思う。

先に言っておこう。

私はこの旅でとても無茶をしたような感じがしている。

「感じがしている」といって曖昧にしたのは、あまり後悔はしていないからだ。

ただ、もし同じように爪木崎灯台で星空撮影に挑戦しようとされている方がいたら、同じようなリスクは踏まない方が無難かもしれない…。

そしてこれを書いている、5月1日AM1:00、本来では今日のお昼、東京へ帰る予定だった。

がしかし、たったいま、異なるペンションを予約し、延泊を決めた。

これまた、先に言ってしまうと、本日までの星空撮影の挑戦は失敗に終わってしまったのだ。

ここからの文章にはその失敗に終わってしまった内容を、次のブログでは延泊し再挑戦した結果を振り返りたい。読んでいただけたら嬉しい。

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歩いたら2時間くらいかかるよ?

私が旅をする前、甘くみていたポイントがある。それは「移動方法」だ。

視界はこんな感じ。いや、リアルホラーゲームやないか…。

漆黒の暗闇。

光がないからこそ星空がみえるスポットであり当然と言えば当然だが…。

左右の林からはなにかが駆けずり回る音がする。後ろはもはや振り返りたくない…。スマホのせめてもの明かりで足元を照らして歩く…。

ISO感度をあげて撮った写真

「歩いたら2時間くらいかかるけどいいの?」

これは星空撮影予定のスポット付近までペンションから車で送ってくれたオーナーが私にそっとのこしてくれた言葉である。

「この暗闇のなか、2時間かけて歩いてペンションに帰るのか…」

受け止めきれない事実を独り言にして受け止めたようなふりをして、歩いてしか通れない道を灯台に向けて進んでいた。

写真の現在地から左上の灯台まで歩く必要があった

そもそも、なんでそんなところに宿泊地を決めたのだ、とか、なんで車で移動しないのだ、という疑問の声が聞こえてきそうである。

これはごもっともで、本来なら、付近の宿泊地を予約すべきだし、車で移動するべきだ。

だが、私には変なこだわりがあった。

こだわりそのいち、
「部屋がしきられていなきゃ嫌」

こだわりそのに、
「最低限の安い宿じゃなきゃ嫌」

である。

それらを満たすなかで一番目的地に近いのを予約したのだ。

車で移動しろということだが、タクシーなり、歩いたり、なんとでもなるでしょう、と適当に楽観視していた。

想像力が足りていなかった。

まさかこんな暗闇を歩くことになるとは…。

ISO感度を上げて撮った写真

歩いて灯台の下まできた。誰もいないし、なにも見えない。

天気は一応晴れの予報だが、海岸付近のため波風が強く、5月のGWだが、肌寒い。

とりあえず撮ったるか!!

なんのためにここまで来たのかを思い出し、三脚を設置する。

話はそれるが、星空撮影にはカメラを固定する三脚が必須である。

数日前に家電量販店で買った激安、2400円の三脚をリュックから取り出す。

そこそこ値段のする三脚を買って、いい写真を撮る人より、激安のおもちゃみたいな三脚を使って、いい写真撮っちゃうのよ、俺は、みたいな方がかっこいいじゃん?、とか思いつつ、にやにやしてたら、部品がとれて地面に転がった。

一応とれるべきではない部品だ。

うわ、とれた!!と思って、暗闇のなか、あたふたしながらもとの部位へ、無理やり押さえつけてみる。

ついた。すきだ、やっぱり、この三脚。

そんな無駄話はさておき…、

カメラの設定も見直していく。

よくいうカシャッの
「カ」がシャッターの開く音で、
「シャッ」が閉まる音なのだとしたら、

星空撮影は

カ…………………………シャッ

というふうにしなければならない。

それを一枚の写真にすると光を多く取り入れた明るい写真となるのだ。

天の川がみえるはずの灯台の上空には
分厚い雲がかかっていた

撮れた。

雲が多い。

天の川が出てくるのは24~26時だ。

そんな風に連想してスマホの時計を確認する。

22時半。

本日の主役の登場はまだか…、
撮っては確認する作業を繰り返しながらそう思った。

灯台もと暗し、ならぬ…
灯台もと暮らし…だ。

荒川アンダーザブリッジなみの世界観を膨らませながら、私は持ってきたシートを大胆にひろげ、横になる。

うわ、これ、ちょっとエモ&チル(ダサい)じゃない?

まっ暗闇のなか、灯台へ続く小さい道のうえで寝っ転がって星座を繋いでると、なんだか、生きている本質的な幸せを感じる。

フリーダム(ダサい)だ!

「…。こ、こ、こんばんわあ…」

!?!?!?

ヒトがきた。ニンゲンがきた。

寝転がっていたシブタローは度肝を抜かれる。

そしてそれからほんの零点数秒の間にいろんなことが、頭を駆け巡った。

こんな暗闇のなか歩いていたら足元に人間らしきなにかが寝っころがっていたら、自分だったら飛び上がって驚くよな、

とか、

でもこんばんわって話しかけられているという段階ということは、その驚きから始まって、私のことをまじまじと観察して、あ、これ人間だw、うけるw、道の真ん中で寝てるんだけどwと理解した後か!?、これは!?、

とか、

だとしたら恥ずかしくないか、 変な奴だと思われているかもしれない、 
「ぼ、ぼくはふつうの、ニンゲンです!!」 って挽回しなきゃ、

とかである。

「すいません。誰もいなかったので気を抜いてくつろいでました。」

すっかり彼ら(ふたり)と仲良くなって、私は先程の醜態を挽回しようとしていた。

恥ずかしいときは恥ずかしいことしてましたよね、と分かったように伝えたくなる。

なぜなら恥ずかしいからだ。

変なやつであったことは挽回しようのない事実であるような気もするが…。 

「ここからさらに雲が出てくるみたいです。」 

30分ほど滞在し、彼らは諦めて帰っていった。

東京から車でここまで訪れ、同じく天体撮影をしにきたらしい。

天の川が出る時間にまもなくなるが、夜空には雲がかかっている。

あ(察し)、こちら和歌山の白浜ですぅ~。

午前2時。寒い…。帰りたい…。…。帰る…! 

結局天の川は姿を現さなかった。

心も身体も冷え切った私はそう決断するなり灯台をあとにして歩き出す。

“下田 タクシー” 

3つのタクシー会社がでてくる。

★☆☆☆☆  
電話したらでてくれ 

★☆☆☆☆ 
社会人としての態度ではない 

…。

口コミは見なかったことにして電話を掛ける。

「ああ、ちょっと下田駅の方に戻ってくるようじゃないと無理ですね〜。」 

宿泊先のペンションは爪木崎を挟んで下田駅とは反対側にある。 

撃沈。

「ぷるるるるる…」 

誰もでない。

「ピー、ピー、ピー…」 

繋がらない。

“白浜 タクシー”
っと…。

ペンションは白浜という地域にあった。 

先程かけたタクシー会社とは異なる電話番号であることを確認し、ヒットしたタクシー会社に電話する。 

「どうも○△タクシーです~。」 

いきなり繋がった。

「つめ?ん?つめきざき?どこですかそれ。」

時刻は午前2時半。藁にもすがる想いで、すっとんきょうに明るい女性オペレーターに自分の居場所を説明する。

「ああ、もしかして、静岡にいらっしゃいます~?」 

「あ(察し)、こちら和歌山の白浜ですぅ~。」 

プチッ、ピー、ピー、ピー、ピー。

希望が断ち切れる音がして、シブタローはペンションへと歩きだした。 

行きの車でみたびゅんびゅん流れる景色を思い出す。 

時速4、50キロで15分くらい車で走り続けた道のりを歩くと思うと…。

いやいや、考えずに無心に歩くことにした。

ガサゴソッ(両脇の林から音がする)

ひえぇ。

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殺されるのかと思いました 

2時間かけて帰った次の日は天気も悪く、寝ていた。 

特にブログに書けるようなことはしていない。 

が、歩けば歩くほど、なにもできない時間を過ごせば過ごすほど、爪木崎の天の川の写真を撮るために、出来る限りのことはしたい、という熱意がふつふつと燃え上がっていくのであった。 

そして前回の挑戦から翌々日、2回目の天の川チャレンジだ。 

天気予報は晴れ、だが、灯台の上空も晴れるかわからないのは1回目の際に学習済みである。 

だが、行ってみないとわからない、やってみないとはじまらないというのはよく言われることである。

午後18時、灯台のもとへきた。 

雲がでている。 

午後19時、諦めた。 

帰る。 

ちなみになにが諦めの決定打だったかというと、それまで明日の朝まで晴れ予報だった天気予報が手のひらをかえすように曇りに変わったからである。

だがしかし…

また2時間歩いて帰るのは御免だ…。

いまの時間ならタクシーがつかまるのでは?

そう思い、先日ヒットした下田のタクシー会社に電話してみる。

ひとつ目…でない。

ふたつ目…でた。

「爪木崎の灯台の駐車場?いるんですか、いま?いや、行けないことはないですけど…。はい、じゃあ運転手、向かわせますね…。」

しばらくするとタクシーがきた。遠方の暗闇から車両を走らせる音が聞こえる。

ああ、助かった…。

シブタローはホッと肩を撫で下ろした。

「殺されるのかと思いました。」

私が後部座席に座るなり運転手はそう言った。

「わあ!!」と運転手を驚かしたら彼はびびり散らかしたかもしれない。
が、私は思わず爆笑してしまった。

確かに私がタクシー運転手だったとしてもこんな誰もいない真っ暗で孤立した岬に呼び出されたら身構えるだろう。

きっと車を走らせている最中、この暗闇の先に人がいるのか?いるとしたらなにをしていたんだ?と疑問がどんどん渦巻いていたに違いない。

私が爆笑したことをきっかけに、お互い気を許して話をした。

車に同乗する、ということはある程度の信頼関係を築いたうえで成り立つ行為なのかもしれない。

そんなふうに映画「ドライブマイカー」を観ても感じていたところである。

「都合にもよって電話にでられないこともありますが、一応24時間やってますのでまたいつでも呼んでください。猪とかもでますから。」

前回星空撮影を試みた際はどこからもタクシーを呼べなかったことを話すとそう言われた。

そうか、両脇の林をなにかが駆け回る音は猪だったのかもしれない、そう思って運転手にさよならをした。

ペンションの入り口へ歩きながら私は考える。

SNSでたまに

「なんの成果も得られませんでしたっ!!」

という巨人系漫画の画像をみかける。

現在の私はそんな状況である。東京からはるばる静岡まできたが、本来の目的である天の川を写真におさめるという点においてなんの成果も得られていない。

やれることはやって東京へ帰ろう。

本来なら明日の昼帰る予定だったが、気が付いたときには付近の別のペンションを予約していた。

シブタローの天の川撮影チャレンジは次回のブログに続く…。

(追記)
続きは以下↓
天の川の写真が撮れるまで一週間その瞬間を待ち続けた体験談(結末編)